西澤保彦「腕抜探偵」

腕貫探偵

腕貫探偵

どんなに目と鼻の先に置かれていても、心身ともに健やかなものの視界には絶対に入ってこないものというのが世の中にはある。見えていても見えていない。櫃洗市市民サーヴィス課を名乗る真っ黒い腕抜をした年齢不詳の男と、「日頃のご意見、ご要望、なんでもお聞かせください」なんていう張り紙は、普段なら気にも留めなかっただろう。なのに今日は、「個人的なお悩みでもお気軽にどうぞ」のキャッチフレーズに、ふと心惹かれてしまったのであった。
堅苦しいお役所仕事な安楽椅子探偵ものです。無個性が極まりすぎて逆に個性になったような、名前すら明かされない正体不明の男を主人公にしてキャラクター小説的な話を書いてる感じです。なんか、ありえないを通り越して挑戦的ですらありますw
それぞれの短編は普通に面白いくらいでした。このレベルの小話ミステリは、西澤保彦なら量産できそうな気がします。