きづきあきら「うそつきパラドクス」

うそつきパラドクス 1 (ジェッツコミックス)

うそつきパラドクス 1 (ジェッツコミックス)

うそつきパラドクス 9 (ジェッツコミックス)

うそつきパラドクス 9 (ジェッツコミックス)

最初のうちは栖佑さんの遠距離恋愛は、八日堂にとってのただの障害でしかなくて、というロミオをジュリエットの変奏だったんですよ。でも栖佑さんの遠距離恋愛の相手、名古屋こと大桑が出てきて、しかも栖佑さんを共有する形で3人での終わりの見えないセフレ関係になったあたりから物語が一段上のレベルに行きました。みんながみんな自分のことしか考えてなくて、倫理的にはめちゃくちゃなことになってるし、誰もが傷ついていく。一番傷ついてるのは栖佑さんですが、この歪んだ関係を終わらせずに継続してるのも栖佑さんが結論を出さないせいなんですよね。8巻あたりの閉塞感とエロさは相当のものがあります。めちゃくちゃエロいのに乾いた笑いが出てきます。ゎーぃゎーぃ。登場人物の誰にも共感できないけど、心理描写がうまいから理解も感情移入もできる、というバランスがなせる技でしょう。
この歪んだ関係を継続することが目的になっている大桑。最後に栖佑さんのために栖佑さんに嫌われることで終止符を打った八日堂。終わらせることを八日堂に教えられきちんと終止符を打った栖佑。そして。。パラドックスも含めて嘘も本当も飲み込んだラストもきれいでいいですね。こんなドロドロした話がこんなきれいな終わりでいいのか、というのはおいといてw
まとめて読むと毒にあてられるけど、その価値がある素晴らしい作品でした。