長谷敏司「BEATLESS」

その笑顔を僕は信じる。君に魂がなかったとしても――。
二十二世紀の日本では、いや世界ではhIEと呼ばれる人間型ロボットが、減少の一途をたどる人間に代わり労働力を供給していた。チョロい高校生のアラトは、正体不明の美しいhIEのレイシアとであったことで、人間とAIを巡る戦いに巻き込まれていくのでした。みたいな感じ。ロボットSF・ボーイミーツガールです。
この手の話だとAIが魂を持つのが定番ですが、本作ではAIの魂については徹底的に否定されています。あなたに笑いかけるのは、それが合理的だから。そうすることであなたの感情をハックできるから。という感じの主張をレイシアが、あるいは他の登場人物が繰り返し、それでもアラトはチョロいから信じます。うん。ライトノベル的な設定なのに、細かい世界観がしっかり作りこまれた、かなりハードなSFです。テンションが高いまま進行するストーリーも面白いです。
これを言うと物語の根幹が揺らぐけど、アラトの「信じる」はただの思考停止に近いと思います。レイシアに好意を寄せるならなおさら、もっとしっかり調べて考えないと。謎の存在のまま「信じる」って言われても・・・。