森博嗣「ヴォイド・シェイパ」

まず一言。文庫本よりkindle ebookが高いって何なの?*1まあいいや。で内容。
いつから山の中にいたのか、覚えていない。カシュウにはきけなかった。自分の体がまだ小さかったころから、共に暮らし、剣術やあらゆることを教えてくれたカシュウがこの世を去った。自分は、カシュウの教えに従い、山を下り里のものにカシュウの死を告げる。その後は、旅にでも出るつもりだ。
自分の出自にも世間のしきたりにも全くこだわることなく、強さだけを求める青年・ゼンを主人公にした時代小説になります。時代設定も歴史的背景もなにもわからない中で純粋に強さを求めるあたり、「スカイ・クロラ」シリーズに似た作品群になるのでしょう。「スカイ・クロラ」は大人に管理されるキルドレが、空と自由を求める話だったけど、本作はすでに自由な主人公が強さを求める話です。自分ひとりで気ままに自由に生きていくためにはある種の強さが必要なのでしょう。あらゆるものをゆっくりじっくり考えるゼンの思考も丁寧に書かれていて、素直に感情移入できます。
静かで、それでいて激しい戦闘シーンも素晴らしいです。続きも読みます。

*1:俺は3割引セールで買ったけど、釈然としません