「氷菓」から始める日常推理

アニメ「氷菓」面白いですね。
あの作品、形式としてはミステリですが知っての通り人が一人も死んでいません。こういう作品は日常の謎とか日常ミステリとか言われる作品で、それなりに人気のあるジャンルです。誰もいない部室のケーキを食べたのは誰だ?みたいなしょぼい地味な謎を扱います。北村薫「空飛ぶ馬」加納朋子「ななつの子」若竹七海「僕のミステリな日常」あたりが元祖と言われていますが、歴史は興味ないので端折りましょう。
実はこのジャンル、一見さわやかな話が多そうに見えますが、身近にいる人の悪意を印象的に暴いてしまうので下手な猟奇殺人ものより後味悪い話があったりします。その辺をどう回避してるかも注目してみるといいかもしれません。
最近は、単純な日常推理だけではなく、その他の追加部分で個性を発揮する作家さんが多いような気がします。
適当にお勧めをあげていきます。

氷菓」を筆頭に青春小説的な作品が多いです。それもひねくれて後ろ向きな青春w 「春季限定いちごタルト事件」から始まるシリーズと名古屋グランパスの監督ユーゴスラビアからやってきた少女と過ごす日々をつづった「さよなら妖精」がお勧めです。

ロマンチックな作品が多く、推理小説としても面白いけどむしろ恋愛小説みたいです。いい面も悪い面も含めて、心の機微を謎に見立てて書いてる感じです。「掌の中の小鳥」「月曜日の水玉模様」「ななつの子」あたりがお勧めです。

真相というよりオチと言う形容が正しいような、落語でも聞いてるような楽しい作品ばかりです。あと猫丸先輩はあなたの知ってる誰かに似てると思うので、読んでみるといいよ。何から読んでもいいので「幻獣遁走曲」「猫丸先輩の憶測」を名前だけあげておきます。

嫌な話が多いです。善意という名のもとに展開されるエゴイズムをシニカルに書きます。嫌な話が多いです。そこがいいのですが、好き嫌いははっきりと分かれます。毒テイストの薄い「サンタクロースのせいにしよう」「スクランブル」が最初に読むのにはいいんじゃないでしょうか。

とにかく上品です。でも嫌な話も多いです。推理に文学知識を要求されることが多く、ガチ理系のおいらにはちょっと厳しい作品が多かったりします。今なら「街の灯」から直木賞受賞作「鷲と雪」に続く3部作を読めばいいと思うよ。

萌えと青春小説と日常ミステリ、という米澤穂信と似たポジションにいます。もうちょっとライトノベル寄りかな。「理由あって冬に出る」からどうぞ。

40巻くらい出てる「Q.E.D.」で、3話に一つくらいの割合で日常推理を扱っています。どれも質が高いので小説を読むのがだるい人は手に取ってみるといいかもしれません。