スパーリング

前の試合が終わり、いよいよぼくの番になった。
ロープをくぐり、リングに上がりステップを確認しながら相手を待った。だれもいないリングの、心地よい孤独がぼくを満たす。前日の深酒の影響はあまり感じられず、体も軽い。相手もリングに上がると、レフリーを勤めるインストラクターからルールの説明を受けた。一分三十秒の二ラウンド、後ろに回る攻撃は禁止、バッティングに注意するように。特殊なバックボーンを持つぼくにとって、後ろ蹴りが禁止されたのはかなり痛いが、ルールに文句を言ってもしょうがない。
相手と離れて試合開始を待つ。
ぼくは相手を見る。目があう。ぼくと彼の間に奇妙な信頼関係が生まれ、彼の心に灯がともるのが分かった。ぼくのことを敵と認め、ぼくに勝ちたいと感じ始めている。
ゴングが鳴った。
お互いにアップライトに構え、リングの中央でグローブを合わせる。そのまま間合いを調整し、僅かに遠い位置から彼のグローブに向けてジャブを連打する。相手が返すパンチを上体でかわし、さらにストレート系のパンチを合わせる。相手のミドルキックをバックステップでやり過ごし、すぐにミドルキックを返す。どれも当たってはいないが、相手を観察しながら自分のリズムを作るために、後の先を狙い続けた。
相手のほうが僅かにリーチが長いけど、スピードならぼくのほうが上だ。
勝てる。
一つ一つの攻撃のスピードを上げる。ジャブ。スウェーで外してストレート。ヘッドスリップでかわしてフック。バックステップ。そのままミドル。相手のパンチの間合いに顔を出し、ジャブにあわせて出したライトクロスが入る。攻防は激しさを増し、ローを受けた太ももの痛みは意識の外へ遠のいていく。
ふいに時計係の声が聞こえた。あと三十秒。ぼくは一つ目の切り札を切ることにした。やや遠い距離からワンツーを狙い、スリーのタイミングで始めて放つ右ハイキックが相手を捕らえた。周囲から歓声が上がる。クッションのついたレガース越しに、重い手ごたえを感じた。
レフリーが二人を引き離し、お互いに熱くならないように注意されて、一ラウンド目が終わった。
もう疲れたから普通に書く。大学行く時間だし。
二ラウンドめに二つ目の切り札、左右の連続蹴りを出したらまた歓声が上がったけど当たりませんでした。
全体を通して顔面への打撃はほとんど貰わなかったけど、後半にローキックをたくさん打たれてかなり効いてました。痛いからスイッチしたしw 判定では負けてるかもね。
そもそも倒しに行っちゃダメらしいw 力を抜いてやれ、と何度も言われた。ハイキックは効いてたらしい。
かなり面白かったからまたやってもいいけど、ローキック対策は真剣に考えないとな・・・。二日ぐらい地味に足が痛かったよ。
そんな感じ。