西澤保彦「夢幻巡礼」

能解警部の部下で警察官でありながら連続殺人者な奈蔵渉を主人公にしたチョーモンインシリーズ番外編。保科匡緒も神麻嗣子もほとんど登場しないし、いつもの軽妙な安楽椅子探偵ものとは雰囲気がかなり違っております。ミステリ的にはかなり出来はよかったのですが、このシリーズ読んでない人がいきなりこの本を読んでも( ゜д゜)ポカーン となるだけでしょう。
それより、また「歪んだ親子関係」とか「(親の)愛情という名の独善的支配」とか、そんな話ですよ。西澤保彦の作品の読後感が悪いのはいつものことで、このチョーモンインシリーズも明るい印象のだけどそれなりに鬱だったりどす黒かったりするのですが、ここまで重い作品はなかったような・・・。真相や動機がエグイエグイ。また、奈蔵の自己分析が奈蔵を連続殺人者にも関わらずさほど異常に感じさせないという効果もあって、なんとも不思議な読後感でした(でも、ちょっと鬱った)。