長谷敏司「My Humanity」

My Humanity

My Humanity

短編集です。「あなたのための物語」と世界設定を共通する「地には芳醇」「allo, toi, toi」の2作が特に気に入りました。「地には芳醇」はシアトルの街でITPの多言語アジャスタを研究するケンゾーを主人公に、技術と伝統文化の関係を扱った話です。最初は日本文化を否定していたケンゾーがやがて謙三になり日本人であることを思い出す、という海外に住んでる日本人あるあるみたいな話でした。と書くと強引にまとめすぎてるかな。本当はもっといろいろ考察できる面白い話です。
「allo, toi, toi」は自動性虐待と殺人で刑務所に入ってる囚人にITPを埋め込む話なんだけど・・・。なんというか、本物は違うなと。好き嫌いをめぐる人間の脆弱性の話なんだけど、それよりも本物の狂気とすさまじさを感じる作品でした。
素晴らしい短編集ですね。