森博嗣「マインド・クァンチャ」

強い。今まで出会った誰よりも強い。闇の中にいる一人の敵はこの命を懸けるだけの価値がある。おそらく…勝つことはできない。逃げるべきだ。逃げるべきではない。違う。こんな素晴らしい相手と刀を交えないわけにはいかない。ここで切られて死ぬのならば、それは武士の本能ではないか。
ヴォイド・シェイパ」から始まる時代劇シリーズも一区切りです。いきなりこれまでに最強の敵と対戦して、かろうじて命が助かったゼンは、記憶を無くしていた、というところから始まる最終章でした。でもこれまでのシリーズも、ひたすらゼンがいろいろ考えることがメインだったので、記憶はなくなっても思考があれば面白さは変わりません。むしろ記憶がなくなったことで、これまでよりも思考が鮮明に描かれていたくらいで、面白さの原点に戻ったようです。
おしゃれな表紙といい、「スカイ・クロラ」とついになりそうなシリーズでした。