石持浅海「届け物はまだ手の中に」

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

楡井和樹の全身を震えが襲った。とうとうやった。自分は復讐を遂げることができたのだ。益子先生、やりました。仇を打ちました。それでも、まだ自分にはまだやらなくてはならないことがあった。設楽・かつて親友だった男、同じように益子に救われながら、復讐をあきらめた男。あいつにこの結果を知らせなければならない。おまえと違って自分は行動を起こしたと。そうしてようやく、復讐は完成するのだ。
という経緯で、休日昼下がりの設楽亭を楡井が訪れるところから物語が始まります。設楽亭では、一人息子の誕生日パーティーが開かれ、設楽の妻や妹が楡井をもてなします。が、設楽は一向に姿を見せる気配がない。どういうことだ?という、石持浅海作品にありがちな、一見ただの日常風景だけど裏でいろいろ駆け引きしてる系作品であります。一見普通の状況だけど実際の状況がありがちでないので、他の作品にあるような考えすぎ感がなく素直に楽しめました。
真相が判明してからの女性陣の対応がワンダーですね。でも設楽的にはさっさと楡井を書斎に上げればいいだけのような。ここは論理の穴ですね。