今井哲也「ぼくらのよあけ」

イイ(・∀・)
2038年の東京、日本。小学生の悠真は最近、家庭用オートボットのナナコと仲が悪かった。SAⅢ彗星がやってくる夏休みを前に、友人の真悟、銀之助と遊んでいた悠真は、ナナコの様子がおかしくなったことに気づいた。「宇宙の外からやってきた無人探査艇」を名乗る存在に乗っ取られたナナコを前に、悠真たちは彼を宇宙に帰すことにした。少年たちの夏が始まった。
これは素晴らしいです。少年たちの夏休みと大冒険ですよ。ここではないどこかへの想い。新しい出会いと大切な仲間との別れ。そして少年は少しだけ大人になる。もうこの時点で最低でも傑作になることは間違いない感じですねw
特筆すべき点は二つですね。一つ目は、小学生の主人公たちがいきいきと、圧倒的なリアリティを持って描写されていること。これだけの大冒険を前にしているのに、主な問題になるのがキーアイテムを持つ女の子とどうやって仲良くなるのか、だったり。しかも無邪気さだけじゃなくて、無邪気さゆえの残酷さとか、つい意地を張っちゃってバカなことをしちゃうような、マイナスの側面をきちんと書いてるんですよね。おバカなところも含めて、圧倒的にリアリティがある小学生になってます。
二つ目は、子供たちの周りに配置された大人の存在です。ちょっとネタバレになるけど、「宇宙からやってきた無人探査艇」は悠真の両親や河合さんのお父さんは、かつて「宇宙の外からやってきた無人探査艇」と遭遇して、彼を宇宙に帰すことに失敗しています。かつての失敗をもとに、時には厳しく接しながら子供に未来を託す。大人が出てきたことで「秘密の冒険」感が薄れたことは事実だけど、それでも大人が影の主役として活躍することで、それ以上に物語に深みが出ています。
子供の夏休みの冒険単として紛れもない傑作です。いい作品を読んだ。