桜庭一樹「ファミリーポートレイト」

あたしは、ママと一緒に、住みなれたコーエーを離れて逃げている。山奥の名もない村。死神の住む海沿いの置屋街。養豚と人間だけがある家畜の街。あたしはどこまでもママと逃げるつもりだった。あたしの名前はコマコ。ママの名前はマコ。マコのためのコマコ。ママと過ごした10年があたしの全てだった。
これまでの桜庭一樹作品の延長線上にある作品でした。つまりは、女の子が酷い目にあって、物語にすがって強く生きようとする。これまでと違うのは、少女時代だけじゃなくて女の子の一生(30半ばくらいまでだけど)を扱ってることと、強く生きた結果ダウナーにしたたかに生きれそうなところかな。それにしてもダウナーな小説だ。
主人公のコマコさんは境遇からしょうがないところはあるし確かにそれなりに病んでるけど、物語中毒者に対する厳しすぎる筆致が印象的でした。物語に救いを求める人なんて碌なもんじゃないだろうけど、しょうがないじゃん・・・。