米澤穂信「ふたりの距離の概算」

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

神山高校星ヶ屋杯、通称マラソン大会が始まった。こんなめんどくさい行事には参加したくなかったのだが、俺の願いもむなしく今日は雲一つない快晴だ。どうせ避けられない行事なら、この機会を逃さずに昨日の出来事を考えてみよう。わが古典部の新入部員、大日向友子はなぜ、古典部を去ることにしんたんだ。幸いなことに俺の後ろから伊原、千反田、そして大日向がスタートしている。こうやってゆっくり走っていれば会えるはずだ。俺は大日向を拝み倒して入部してもらうつもりはない。ただ、彼女が何に傷ついて、何を恐れていたのか、考えてみることにした。
古典部の新入生と過ごした日々と、現在のマラソン大会の二元中継でお送りする古典部の文庫新刊です。アニメ化以降のエピソードになります。
日常ミステリとして読むより青春小説として読むべき作品ですが、マラソン大会の進行を軸に過去の小さな出来事を積み重ねて終章に大きなテーマを持ってくる手腕が見事です。日常ミステリの作法を物凄く上手く青春小説に応用しています。
ミステリとしての謎も解いて、マラソン大会も無事に渉猟し、その上でああいう結末になるあたりに、ひねくれた(ry
その意味では非常にこの人らしい作品だと言えると思います。大日向さんはいいキャラしてたので、そのうち再登場しそうですね。