米澤穂信「追想五断章」

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

金銭的な理由から大学を中退し、叔父の家に居候をする傍ら稼業の古本屋を手伝っている芳光は、不思議な依頼を受けた。故人となった依頼人の父親が書き残した、5つのリドル・ストーリを探してほしい。その依頼の報酬の高さに惹かれ、芳光は同人誌を中心に発表された小説を探すことになった。
これはなかなか面白いです。それぞれ単体でも魅力的な5つのリドル・ストーリーを通じて一つの大きく魅力的な謎を追い、謎を追う過程で謎の蚊帳の外に置かれる主人公が感じる無力感(結末を出せないDBくんと一緒ですね)とか、いろいろなものが詰め込まれています。なんだか、小説として、物語としての構成がかなり秀逸です。就職氷河期に大学を中退した主人公の鬱々とした現状と、リドル・ストーリーの作者の対比が苦いことこの上ないです。その辺もこの人の青春小説ぽくあります。