山本弘「詩羽のいる街」

詩羽のいる街 (角川文庫)

詩羽のいる街 (角川文庫)

編集さんにボツにされたプロットを抱え、退屈な日々にうんざりしたアマチュア漫画家の僕は、気分転換に訪れた公園で詩羽と出会った。子供たちのカードゲーム交換会を仕切る詩羽は、誰が何を持っていて何を欲しがっているのかを完璧に把握し、三角トレードやさらに複雑なトレードを魔法のように成立させていった。詩羽は不思議な女性だ。年齢は10代にも30前にも見える。お金も定住する場所も持たず、人に親切にすることで一泊の宿や食事を見返りにもらっている。また彼女の親切は相手を幸せにするだけでなく、ものが余っている人とそれを望んでいる人を結びつける。彼女の親切は奇跡のようだった。
これはなかなか面白いです。
正直に言うと、詩羽のやってることはお金を介したほうが規模を拡大することができて、そうするとそれは資本主義と呼ばれるものになるんだけど、ここまでミニマムに扱って“親切の魔法”とした設定は素晴らしいと思います。全四章の緩くつながった短編でできているのですが、これまでの伏線が交錯してくる後半にかけてどんどん面白くなていくのが印象的でした。あからさまにハルヒなイベントがなかなか楽しそうでしたw
でもこれって一部の人が言う「評価経済」と一緒なのかも。