機本伸司「神様のパラドックス」

神様のパラドックス〈上〉 (ハルキ文庫)

神様のパラドックス〈上〉 (ハルキ文庫)

神様のパラドックス〈下〉 (ハルキ文庫)

神様のパラドックス〈下〉 (ハルキ文庫)

入学したばかりの大学にも、サークルの占い研究会にも微妙な居心地の悪さを感じている直美は、大学祭のくたびれたサラリーマンの小佐灘と出会う。直美は小佐灘に誘われ、量子コンピューターを用いた占いとカウンセリング事業にアルバイトとして参加することになったが、いろいろあって事業は計算世界の中に神(唯一神)を作るというプロジェクトになっていった。
ということで、最新鋭の量子コンピューターで解析世界を作り、その世界の解析神に未来を予測(神だから観測)させようという事業になります。神の定義をしっかりと行い、実際に作ってみることにより背理法で神の不在を証明するまでが序盤の山場だったりします。そのあとの展開もなかなか素晴らしいです。
これまで、宇宙だの救世主だのを作ってきた作者が、より根本的な問いに挑んだ作品ということになるのでしょう。でもそれ以上に、主人公の直美のキャラクタがよかったんじゃないかな。これまでの作品だと、沙羅華を筆頭に天才だったりエキセントリックだったりしてたわけですが、どこまでも平凡な直美を主人公に置くことで登場人物の悩みが身近に感じられます。神になるべく作られて、自分では世界中の人を幸せにすることはできないと悩むフライデイMもいいです。
これまでの機本伸司作品で一番面白いんじゃないかな。おすすめです。