桜庭一樹「私の男」

私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

幼いころに地震で家族を亡くし親戚の淳悟に引き取られた花。愛と禁忌で彩られたたった二人の家族の話、二人だけの世界が、花の結婚式から過去へさかのぼってつづられています。
描写の対象は徹底して花と淳悟なのに、視点人物を他の人にして他者の目を通すことで歪を書いたり、花の視点からまっすぐに描写したりと、変化を付けているあたりが面白いです。
直木賞受賞作の名に恥じぬ丁寧な描写がされる作品ですが、個人的にはファミ通で出した作品くらいの、もうちょっとジャンクな文章の方が好きかな。