米澤穂信「ボトルネック」

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

恋人を弔うために東尋坊にやってきたリョウは、運命に招かれるように崖から転落し・・・気づいたら見慣れた金沢に戻っていた。困惑しながら自宅に戻ったリョウは、そこでサキと名乗る女性、生まれてこなかった自分の姉と出会い、この世界が自分が生まれずにサキが生まれた世界だと知った。という話。
無気力に回りに流されるままに生きてきたリョウと、まわりの状況を変えようと努力し実際に変えてきたサキを対比させることで「自分が生きていることに価値がない(んじゃないか)」という自意識を突き詰めて書いた作品でした。「自分がいないとこの世界はどうなるのか」という感じ。
自分が唯一信じてきたものさえ、よりどころにしてきた思い出さえ偽者だった、という苦すぎる展開が素晴らしいです。唐突な終わり方も含めて、自意識に対して真摯に向き合った作品だと思います。