北村薫「玻璃の天」

玻璃の天 (文春文庫)

「街の灯」（→）の続編。基本的な感想は前回と変わっていません。
昭和初期の東京の雰囲気が、これから戦争に向かっていくというきな臭い空気まで含めて丁寧に描写されていて若干息苦しさを感じるほどです。まあ基本的に上品な物語ばっかり書く人だから、作中の上品な世界が合っているのでしょう。ちなみに、作中の古文や漢文を使った文型っぽい謎かけや解説は全く興味を持てませんでした。
それはそれとして。「今のわたしたちと隔たりの有る時代、限られた階層に属する主人公に、心を沿わせることはできるのだろうか」なんて抜かす、SFやファンタジーはもちろん時代小説すら読めませんと公言する人間に、解説書かせちゃダメだと思いますよ。