壁井ユカコ「No Call No Life」

NO CALL NO LIFE (角川文庫)

NO CALL NO LIFE (角川文庫)

携帯電話に残された過去からのメッセージに導かれるように、夏休み前の埠頭で、有海は春川とであった。破天荒で現実から浮遊したような春川は、どこか自分に似ているようで、いつしか二人は夏休みを一緒に過ごすようになっていた。みたいな話。
ここまでだと、高校最後の夏を、永遠に終わらないように思える今を、楽しそうに刹那的に過ごすという恋愛小説でしかないけど、夏が空けてからは怒涛の展開が待ってたりします。いつまでも子どもでいられるわけがなくて、それでも有海も春川も大人にはなれなくて、周囲の圧力はどんどん強まっていって・・・。という展開からやや唐突とも思える衝撃的なラストまで、重苦しい雰囲気が漂う終盤は一見の価値有りです。
それはそれとして、有海や春川の性格設定は、十台の少年少女の不安定さがどうのというよりメンヘラといっていいレベルのような気がします。別にこの作品が嫌いなわけじゃないけど、同系統の作品では桜庭一樹の作品群のほうが恋愛色が強くなくて好きです。