加納朋子「モノレールねこ」

モノレールねこ (文春文庫)

モノレールねこ (文春文庫)

そのねこは、デブで、不細工で、野良だった。我が家にやってくるねこに首輪を見つけたぼくは、小さな紙にねこの名前を尋ねる紙を挟んでおいた。そうして、ぼくは、塀の上に座って両脇から垂れた脂肪でがっちりと塀をつかむねこに、モノレールねこなんて素晴らしい名前をつけたタカキと、ねこの首輪を通して文通するようになった。という、ねこを介した子どもたちの文通がほほえましい表題作「モノレールねこ」を含む短編集です。
ベストは「バルタン最後の日」かな。小学生に吊り上げられたザリガニの一人称で綴られる、ある家族の物語。ユーモラスな序盤から手に汗握るクライマックス、暖かくどこか切ないラスト、完璧な短編ですね。
総じてクオリティの高い短編集でした。