森博嗣「フラッタ・リンツ・ライフ」

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

人を自由にするのは力だ。
人はそれを持っている。
自分の力を信じること、それが力の意味だ。

大人にならずに永遠を生きるキルドレ。生まれたときから戦闘機乗りとして戦い続けることを運命付けられた僕は、濁った地上を離れて空を翔ける。相手の戦闘機とダンスを踊る。地上にいる時間は、再び飛び立つまでの待ち時間だ。待っている時間が、つまりは地上で生きていることに等しい。僕は曇った空を眺め、その上空の輝かしい景色に思いを馳せた。

僕は飛べる。それが僕の力であり、自由なのだ。
そして、飛び続けるために、僕は戦う。

キルドレの一人称で、戦争を仕事にする子供の寓話を描く「スカイ・クロラ」シリーズの四作目。本作の主人公は栗田でした。空中戦の描写がひたすらに淡々としていて、ある種の静けさすら感じさせます。聞こえるのは、エンジンの音。機体が空気を斬る音。自分の呼吸の音がうるさく感じるほどだ。みたいな。空を飛ぶことだけを求めて、金や地位や女には、生きていくことにすら全く執着しない、キルドレの思考を淡々と描写する筆致も大変心地いい。

なんのためでもない。
なにも欲しくない。
誰のためでもない。
誰も褒めてはくれない。
ただ飛び続けたい。

キルドレの潔い生き方に物凄く憬れます。(中二病的な意味で)(そんなオチかよ)