山科千晶「つきこい」

月の綺麗な夜に、ハチ公の前で来るはずのない恋人を待ち続けている「渋谷の月待ち女」。それが、人ごみで俺に声をかけてきた女性の通称らしい。都市伝説よりはありそうな話だし、OL風のその女は、確かに美人ではあった。それから俺は、あの場所を通るたびに、空を見上げるあの女を探すようになった・・・。という表題作「つきこい 続・月下少年」と、月待ち女・イズミの過去話な「月下少年 ―catch him under the moon」の二編を収録。
ライトノベルらしくない作品で、普通の恋愛話が繊細な筆致で淡々と綴られます。「月下少年」のほうはお話と関係ないところで地味にSFな何かが進行してるっぽいけど、イズミ視点では至極ふつーな話だし。総じて上品で悪くないとは思うけど、話し自体がちょっと短くて書き込み不足かもしれませんね。それぞれ、文庫本一冊くらいかけて綴ってもよかったような。
とはいえ、こういう話が(ハードカバーじゃなくて)ライトノベルで出版されるというのは、歓迎すべきことだとは思います(金銭的な意味で