恩田陸「蛇行する川のほとり」

蛇行する川のほとり (中公文庫)

蛇行する川のほとり (中公文庫)

ひとつの寓話を聞かせよう。
今はもういない、あの蛇行する川のほとりでの少女たちの日々。
誰も知らないある物語を、
今、あなただけに。

素晴らしい。
現時点で恩田陸の最高傑作だと思います。これまで見えてきた景色が突然切り替わるような恩田陸のミステリが持つ特徴を残しながら、耽美的で現実感の希薄な雰囲気の少女小説になってます。一人称の視点人物を切り替えながら少女たち(男もちょっと出ます)の夏が綴られるのですが、どの人物も見方をちょっと変えるだけで、無邪気さや残酷さ、ある種の危うさといった違った魅力が現れるのもうまい。色んな方向から光を当てることで、平面だったキャラクタが立体になるというか。
清濁併せ持つ少女として描写していたキャラクタの一人称で、これまでいろいろと違った一面を見せていた少女が、実際のところ何を想っていたのか、を綴るラストも素晴らしいです。オチが微妙なことの多い恩田陸作品の中でも屈指の見事な〆だったと思います。