北村薫「語り女たち」

語り女たち (新潮文庫)

語り女たち (新潮文庫)

実務家の弟と比べ、彼にはいささかの空想癖があった。サイダーの泡が弾け散る姿に、星々の生誕から死を重ね合わせ、眺め入っているようなところがあった。自然、多くの書物を紐解いてきた。しかし、30を超えた頃から視力が急に落ち始めた。そこで彼は、物語を読むより市井の人の話を聞こうと、アラビアの王に倣い、全国から語り女を募集した。
物凄く上品な作品でした。そして上手い。250ページにも満たない本に17の短編があって、当然一つ一つは物凄く短いのだけど、その短い話でちょっとした不思議を綴って、怖かったり暖かかったりと様々な読後感を与えるのはさすがです。それぞれの話にイラストがついてるのですが、そのイラストがまた上品でいいですね。
ジャンクな物語ばかり消費してる身にはもったいないような上質な物語でした。