小林泰三「忌憶」

忌憶 (角川ホラー文庫)

忌憶 (角川ホラー文庫)

記憶をテーマにしたホラー短編集。
直人のダメ人間描写が嫌過ぎる「忌憶」。これはもう直人のダメさに尽きるでしょう。滝本竜彦森見登美彦なら自虐の精神で笑いにするところだけど、本作はそんなこと一切しません。加虐の精神で書かれた、というか作者の嫌がらせとしか思えないダメ人間描写が延々と続きます。これはキツイw 幻想的な雰囲気も不思議な記憶もこのダメ描写の前にはかすむねww
腹話術が暴走しておまえが俺でな「器憶」。嫌いじゃない、むしろ好きなネタだけど、この後味の悪さはなんでせう? だからダメとは言わないけど・・・。
数学博士と同じネタな「危憶*1」。同じネタでも料理の仕方でこうも違うのかww 厭な感じが大変いいです。
話自体は上手いし面白いとは思うけど、作者から読者に向けられる強烈な悪意の存在が話以上に面白い作品でした。

*1:本当は土ヘンに危って字