海猫沢めろん「零式」

零式 (ハヤカワ文庫JA)

零式 (ハヤカワ文庫JA)

かつての大戦で帝国LEVに敗れた神國。帝国に植民地支配され壁で囲われる鎖国状態のスラムと化した神國で、原始区動機レシプロマシンに乗り暴装賊ナイトライブスをする少女朔夜と空を夢見る夏月が出会い、壁の外を目指して疾走する。
物凄く真っ直ぐな青春小説でした。壁の外をひたすら目指しいろいろなものをスピードで振り切ってみたら、自分とボロボロのマシンだけが残ってました、みたいな話なんですが、この疾走感は凄いですね。特に怪物レシプロマシンに乗る二人の少女が焦燥感を、過酷な現実や過去すらも前に進むエネルギーに変えて壁をぶち破るクライマックスのハイテンションぶりは凄まじく、あっという間に読みきってしまいました。

――帰る場所なんてない。どこにも安らげる場所なんてない。そう思ってた。
――違う。
あった。みつけた。答えを。
この速度の中に。
加速し続け、時間と空間の呪縛からさえも、あたしを解き放つこの速度、この流れの中にだけ、あたしの居場所がある。

圧倒的なスピードとテンションで綴られる、青臭い青春小説。やっぱりいいよね、こういうのw