鈴木大輔「空とタマ」

空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly (富士見ミステリー文庫)

空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly (富士見ミステリー文庫)

あまり知られていないが、秋は家出の季節でもある。七回目の家出をしたオレは、前から避難場所として目に付けていた田んぼの中の倉庫に向かった。倉庫の中でたばこを吸って八つ当たりをしたところで、オレは上の階に先客がいることに気がついた。名前すら名乗らないそいつをタマと名づけ、オレ、天野空とタマの倉庫とプライドを賭けた攻防戦が始まった。
2階に陣取り防衛線を張るタマと突撃しようとする空の肉弾戦が、頭脳戦になって次第に二人の間に絆のようなものが出来て・・・という過程が自然に書けてるのがいいですね。空の身の上話はさすがにやりすぎだと思うし、タマも都合よすぎるところがあるけど、そんなことを指摘するのは野暮なのでしょう。
シンプルなストーリー展開と、シンプルなメッセージ。そして作者の心がこもってれば、拙くても粗があっても十分に傑作になる。そんなことを思い出しました。
こういうのを子供だましだと思っちゃう汚れた大人(w も当然いるだろうし、そういう人には向いてない話だとは思います。