機本伸司「神様のパズル」

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

卒業の危ぶまれる落ちこぼれ大学生の綿貫は、ゼミの担当教授に天才少女でありながら不登校な穂瑞をゼミに連れてくるように頼まれた。穂瑞のツンツンした態度に反感を覚えたぼくは、彼女に究極の疑問をぶつけた。「宇宙は無から作られた。じゃあそこいらのある無を材料に、人間に宇宙は作れるのか?」そしてぼくは卒業が掛かったゼミのディベートで穂瑞と同じチームになり、宇宙を作れることを証明しなければならなくなった。
日記形式を採用したことを含めて、テーマを見せるための小説としての技法やストーリー展開は素晴らしいのですが、作者がそのテーマに対して距離を置いてそうですね。とか思ってたら解説読んで納得、機本伸司、今年で50歳だそうで。たぶん作者にとって「あの頃悩んでた自分」は完全に相対化されてるのでしょう。そこから生じるテーマと主人公に対する距離が、作者が今も悩んでそうな(wライトノベル周辺の青春小説との最大の違いだと思います。どっちがいいとかそういう話じゃないよ?
宇宙が作れるか?をディベートするゼミの様子もリアリティあったし、それによって物理学の発想や考え方を提示するというのはいいアイデアですね。