野村美月「“文学少女”と死にたがりの道化」

天野遠子先輩は本を食べちゃうくらい物語が好きな本物の文学少女だ。先輩に文芸部に引きこまれたぼく、伊上心葉は、先輩のために二人しかいない文芸部部室で文章を書くのが日課になっていた。今日も先輩のおやつの三段噺を書いてると、おかしな依頼が舞い込んできて・・・
恥の多い生涯を送ってきました。という書き出しからもわかるように、太宰治人間失格」をモチーフにしたかなり文学寄りの作品でした。優しさとひょうきんさでいい人の仮面をかぶりながら道化を演じる哀しさ、というテーマもよく書けてると思います。重いテーマを扱いながらコメディタッチな文体で重苦しくならないのもいいですね。琴吹さんの存在、遠子先輩や心葉の設定なんかが物語の中でうまく機能してないような気がしますが、きっと続編をにらんでのことでしょう。
ちなみに「人間失格」は未読です。太宰治を評価する人がこの作品にどういう反応をするのか気になりますw