倉知淳「猫丸先輩の空論」

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

視点人物が日常生活で出会った”ちょっとした謎”にふらりと現れた猫丸先輩がそれっぽい解釈を与えるのが基本フォーマットな短編集。「水のそとのなにか」「とむらい自動車」「子ねこを救え」「な、なつのこ」「魚か肉か食い物」「夜の猫丸」の6編収録。ひたすらに、ただただ楽しい。
最近になって米澤穂信が萌えを武器に切り込んできて話題になった日常ミステリ界隈ですが、単純な楽しさとミステリとしてのうまさでは倉知淳に一日の長があるような気がします*1。猫丸先輩のみならず、一回限りのゲストキャラまでがイキイキと描写されてて、その描写の間に複線が仕込んであって真相に説得力を与える手腕はまさに職人芸ですね。
虐待されてる子猫の救出作戦という殺伐とした話がちょっと見方を変えるだけで物凄いほのぼのエピソードになる「子ねこを救え」、大食いが趣味の女子大生が特大ステーキを前に逃げ出したのはなぜか?な「魚か肉か食い物」の2つが特に気に入りました。

*1:米澤穂信の良さは青春小説的な部分に起因すると思います